CMSO(Chief Marketing & Strategy Officer)という役職 ~マーケティングは戦略とセットで考えるべき~|基礎から学ぶマーケ用語

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経営課題を解決するのか、マーケティング課題を解決するのか

本日は、CMSOという役職について考えてみたいと思います。

CMSO=Marketing × Strategy の責任者

僕は、ギックス創業当初より、CMSOという役職についています。耳慣れない役職ですので、名刺を交換した際には必ず「何の略ですか?」と聞かれます。

とりあえず「ちーふ みそすーぷ おふぃさーです」と答えて失笑されたところに、挫けずに「日本の発酵食品の良さを世界に伝えていきたいという気持ちを込めております」と追い打ちをかけて呆れられるまでがワンセットになっているのですが、実際には、まぁまぁ熱い思いのある役職だったりします。

実際は、Chief Marketing & Strategy Officer を意味します。日本語でいえば、マーケティング及び戦略統括 という感じでしょうか。ここまでご説明する際にも、表向きには「創業当時に、CEO(網野)とCTO(花谷 ※現在はアナリティクス事業リード)がいたので、残ったマーケティングと戦略を拾った感じです」という笑い話にしているのですが、本日は、その真意をお伝えしたいと思っています。お付き合いください。

S=Salesですか?と聞かれることが多い

CMOという言葉は、かなり人口に膾炙してきたように思います。しかし、CSOとなると「Sales(販売)ですか?」となる方も多いようです。日本における「営業」がSales & Marketingと翻訳されることが多いせいかもしれません。

しかし、Sales と Marketing は別物です。 もしドラで(本人の意図はさておき)一躍有名になったピーター・ドラッカーさんはこう言っています

セリングの必要性はこれからも続くだろうと考えられる。しかしマーケティングの狙いはセリングを不要にすることだ。

出所:コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 (p.7)

これを読むと、Sales&Marketingを同じ人が考える(統括する)、というのは、なかなか無理のある話だと思いませんか?

Marketing(マーケティング)はStrategy(戦略)との組み合わせが重要

先ほどの引用文を、もう少し続けます。

マーケティングの狙いは顧客を知りつくし、理解しつくして、製品やサービスが顧客にぴったりと合うものになり、ひとりでに売れるようにすることである。理想を言えば、マーケティングの成果は買う気になった顧客であるべきだ。そうなれば、あとは製品やサービスを用意するだけでよい。

出所:コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 (p.7)

そうです。マーケティングは、小手先の業ではないのです。広告やプロモーション、キャンペーンだけがマーケティングではありません。「自社の提供する製品・サービス」と「顧客」がぴったりと重なるように、ビジネスそのものを設計することがマーケティングの役割です。

つまり、マーケティングを語る場合には、自社が「企業」としてどの方向に向かうのか、が、あらかじめ定まっていることが重要です。

例:GiXo の CMSOとしての僕の役割

弊社の場合、僕がCMSO、すなわちマーケティングと戦略の統括責任者として行っているのは

  1. 「社内向けの戦略コンサルタント」として事業横断で「戦略の一貫性」を担保するための戦略コンサルティングを行いつつ、
  2. その戦略の中で定義した「捉えるべき顧客」に対するマーケティング活動の方針策定および実行を行う

の2つです。(ちなみに、弊社は大きな会社ではないので、マーケティングは”コミュニケ―ション”とほぼ同義となり、現状では ”PR” も含んでしまっています)

具体的にいうと、新規事業・新サービスを立ち上げる際に、どういう名前にするのか、を決めるのは僕です。その際に「そのサービスで実現したいこと」「そのサービスで世の中に与えたい価値」「そのサービスの社内での位置づけ(他サービスとの関係性)」などが明確に定められていないといけません。例えば、3月にクレジットカード企業向けサービスを追加ローンチした「graffe」というサービスは、「”草原の見張り番”たるキリン(giraffe)のように、遠方を見通す力を与えるデータビジュアライズ(graph)サービス」となりたい、という意図で命名しています。

さらに、色合い(カラートーン)なども決めていく必要があります。例えば、ギックスのコーポレートカラーはグレー(場合によってはシルバー)ですが、これは「ギックスという企業は、お客様の課題を解決し、お客様の成長を支援する会社であるべきであり、自己都合で何かを押し付けることのない会社すなわち”色のない会社”であるべきだ」という思想を表しています。「単に格好良いから」ということではありません。一方、前述のgraffeは、サービスとして主張すべきものが明確にありますので、キリンになぞらえた黄色をサービスのテーマカラーに据えています。

また、B2B企業であるギックスが、マーケティングに「莫大なお金」をかけるべきではないと考えています。そのため、マーケティングは”お金をかけない”ことを前提に進めています。この根底には「(世の中全員ではなく)分かりたいと思ってくれる人が、きちんと分かってくれればいい」という割り切りがあります。その結果、インバウンドマーケティング(=コンテンツマーケティング)を徹底的に行うことを選択しました。いまご覧いただいているこのサイトも「あたかもB2Cニュースサイト」のようなタテツケで、日々、情報を提供しています。このサイト内の、すべての記事は内製しています。(一部ご寄稿いただいているものもありますが、費用を払って外注しているものはありません。)これらの情報も、掲載にあたっては「ギックスという会社の方針・方向性と齟齬が無いか」という観点で、すべて僕がチェックしています。要は、先述した「弊社のことを、分かりたい・知りたいと思ってくれる人に対して、十分な情報量を提供できているか(あるいは、誤解を招かないか)」ということを念頭においてサイト作り・サイト運営をしているわけですね。

この仕事を「(狭義の)マーケティング視点」だけで実行できるだろうか?

これらの一連の仕事を「マーケティング」というひとつの視点だけで完了できるか、というと、答えはNoでしょう。まぁ、マーケティング、という言葉を思いっきり広義に捉えれば可能なのかもしれませんが、普通に考えればやや無理があります。つまり、これは「経営」そのもの、なわけです。

良くあるCxO(CEO、COO、CMO、CSO・・・etc)に対する誤解がここにあります。

例えばCMOのミッションを「マーケティング課題を解決する」だと思っている人は、0点です。それでは、せいぜい「マーケティング部長」です。あるいは、「マーケティング課題を、経営視点で解決する」だと思っている人もいるでしょう。これは60点です。”Chief”という言葉の意味は、しっかりと理解していると思いますが、まだまだ足りません。

では、正解は何か。それは「経営課題を、マーケティング視点で解決する」です。つまり、経営課題をしっかりと解決することがゴールであり、その際に、自分の担当領域であるマーケティングの視点で何を語るか、が大切ということです。100点。(関連記事:CxOは経営課題に専門領域”x”で挑む

「マーケ」と相性がいいのは「戦略」

その「経営課題」を捉える際に持つべき視点として「マーケティング」と相性がいいのは、なんでしょう?前述のとおり、セールスではありません。オペレーションでも、ファイナンスでもないでしょうね。

やはり、ここに入るべきは「戦略(ストラテジー)」でしょう。自社の提供する商品・サービス、あるいは事業そのもの・企業体そのものが、どの方向に向かうのか(=戦略)、を常に考えながら、マーケティングは語られるべきだと僕は思います。

現在、世の中にはCMSOという肩書きを耳にすることは少ないです(というか、殆どいないでしょう)。しかし、たとえ役職名が「CMSO」ではないとしても、戦略とマーケティングの融合を担当する役職は、今後、ますます重要性を増すことでしょう。

 

備考:もちろん、CEOが戦略策定を担当する、という場合も多いです。これは各企業の状況によって違います。弊社の場合は、スタートアップということで、ファイナンス周りに関するCEOの負担が相対的に重くなりがちなことと、彼自身が「アイデア」を出すタイプの人間であるために、僕が”実行まで含めた全体バランス”を見る役割として、マーケティングとセットで戦略を担当している次第です。とにかく、大切なのは「戦略が無いと、マーケティングはできない」という両者の関係性です。

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