ギックスの本棚/統計学が最強の学問である[実践編] データ分析のための思想と方法
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- POSTED : 2014.11.08 09:19
f t p h l
統計学が最強の学問かは分からないが、統計学はビジネスマンとして学ぶべき必須の学問ではある
売れに売れた前作「統計学が最強の学問である」の続編である統計学が最強の学問である[実践編]が出版されました。正直申し上げますと、タイトルからして、よくある売れた本に対して非常に基礎的な内容のおさらいとワークブック的な要素を入れた本を想定していました。 (例えば、大前研一さんの企業参謀に対して、企業参謀ノートのような位置づけを想定していました。大前研一さんはこのあまり内容が無い企業参謀ノートが出されることを嫌がったようですが、大人の事情で発売されたようです。笑) ですが、Amazonで発注して手にして、その予想をいい意味で全く裏切ってくれました。完全なる続編になります。前作は統計学に関する前提知識と言うか、本人曰く「入門の入門」という位置づけの本でした。前編の「入門の入門」を読んで、いざ統計学を活用するにあたり基礎的な内容を学ぼうと入門書を手にしても、実は世の中に出ている統計学には最適な入門書がなく、そのため本作である実践編を出版されたとのことです。
全てのビジネスパーソンが読むべき本
ではこの本は誰が読むべきなのでしょうか? データサイエンティストを目指す完全なる卵の人がこれを読むのは良いと思いますが、少なくてもこの本を読んで学び始めたレベルの人がデータサイエンティストの名を語るようになるまでには遠いだろうな、と想定しています。これを読んで統計的な専門家になろうと言う人ではなく、統計が素人のビジネスパーソンこそがまさにこの本書を読んで統計という言語を学んで行くのが最適と考えています。統計家や統計がきちんと分かるデータサイエンティストと語って行くためには、統計言語を把握している方がコミュニケーションロスが小さくなります。その統計言語を学んでいくには、前作と並んで本書は非常に良書であると思われます。 弊社では、ビッグデータなどを活用してビジネスでPDCAサイクルを回しながら結果を出していくためには4つのロールが必要であると考えています。(参考:弊社ホームページ)
- ストラジテスト 成長戦略を戦略面で理解し、適切なPDCAを回すため、インテリジェンスの伝達と戦略オプションの提言を行い、意思決定者に対して戦略面での情報武装を支援する役割。
- データサイエンティスト 単なる統計の専門家・データベース屋ではなく、「問い」や「仮説」に適合する分析手法を見極め、データの過不足や定型・非定型に関わらず、収集・統合・分析を行い“解”を出す。
- データアーティスト 分析前の「初期仮説の立案」、分析結果に対する「ビジネス視点での解釈」を担当。データサイエンティストを補完し、「分析結果に意味を与え、ストラテジストの戦略に情報をつなぐ。
- テクノロジスト 最新テクノロジーを活用し、圧倒的に早く、安く、簡易にPDCAを回すための分析環境を検討し、構築し、運用する役割。
データサイエンティストがビジネスもわかり、データからインサイトを得たり、解釈をしたりするセンスに優れ、またビッグデータを取り扱ったり、統計を計算していくソフトウェアにも深い知識があるのであれば問題は無いのですが、私は今までにこれらのすべてを兼ね備えたデータサイエンティストに出会ったことはありませんし、そんなスーパースターを探すのは幸せの青い鳥を探すたびにでるようなものなのだと思っております。そのため、弊社ではその役割を分けてしまい、4つのロールに対して、それぞれに非常にエッジを持った存在を雇い入れ、チームとして対応しています。ですが、ただビジネスが分かる人、データを分析する上で仮説が出せたり、解釈をできたりする人、データベースの取り回しができたり、DWHが扱える人、つまりひとつの領域しかできない人間は必要としていません。私はストラテジストとしてのロールをこなしますが、データサイエンティストと語るために統計学の基礎知識を学んでいます。また、必要となるデータの要求をテクノロジストに伝えるためにデータ・ウェアハウスやデータマート、リレーショナル・データベースと言うものの基礎知識を学んでいます。私が統計の数式やアルゴリズムやモデルを作ることはありませんし、自らSQLを叩いてガリガリとデータハンドリングすることもありませんが、彼らと語るために、彼らの言語である統計学やデータ処理系の基礎知識を学んでいます。弊社には中西という統計専門家がアドバイザーとして参画しておりますが、彼の知識をビジネス面で最大限に活かそうと思うと、統計専門家自身がビジネスを学んでもらう必要があります。また、その一方、同時にビジネスサイドの人間達、つまりストラテジスト、データアーティスト、テクノロジストも統計を学んでいます。 今後はビジネスにおいてますます数字的な教養が必要とされる時代が進むと想定されます。右脳や発想も今まで以上に大事ですが、その能力をより活かすためにも、データを組み合わされる時代がやってきます。そのためにも、基礎知識というより、ビジネスパーソンの教養として統計学が必須のものになるでしょう。本書は非常にわかりやすく、懇切丁寧に統計学を伝えてくれる一冊であり、非常にお薦めです。
f t p h l