ギックスの本棚/高千穂(日労研)|長期熟成100% 本格麦焼酎「高千穂 零」誕生
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- POSTED : 2014.11.01 12:21
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ブランドストーリー とはなんなのか
本日は、黒い表紙に黒字でタイトルの書かれた不思議な一冊「高千穂」をご紹介します。
「高千穂」とは?
高千穂というのは地名です。宮崎県の北の端に位置する町です。
しかしながら、そもそもは、日本神話に出てくる「天孫降臨」の地と言われる場所でもあります。地名の由来は、ニニギノミコトが「千本の稲」を掴み、その籾をまいたことで空が晴れた、という逸話から「尊い(高)い千本の稲穂」で『高千穂』と名づけられたいわれています。ちなみに、このニニギノミコトは、あの手塚治虫の名作「火の鳥」の始まりのお話「黎明編」にも登場します。そこでのニニギは、高天原族を名乗ります。彼らは、実際には天から降り立ったのではなく、大陸から渡ってきた遊牧民族だったのではないかと言われていますが、いずれにしても、そのような神話の時代からの由緒ある土地が「高千穂」なのですね。(関連記事:ギックスの本棚|火の鳥黎明編)
また、この名前を冠した焼酎「高千穂」も有名です。(高千穂酒造株式会社 が製造しています)
本書は、僕の友人でもあるセイタロウデザインの山崎晴太郎氏が、その高千穂酒造の新作焼酎「高千穂 零(れい)」のプロダクトデザインに関わり、そして、そのブランドコンセプトを一冊の本に仕立てたものです。尚、この「高千穂 零」は、グッドデザイン賞を受賞しています。 ⇒参考URL;http://www.g-mark.org/award/describe/41707
語るべきストーリーがあれば、ブランドは際立つ
「ブランドストーリー」という言葉は良く耳にします。しかし、本当に「語るに足るストーリーがそこにあるのか?」がとても重要です。この部分に光をあてず、「言いたいことを言う」「でっちあげる」のは、ブランドというものを毀損します。(もしくは、ブランド価値を向上させることができません。)
この「ブランドストーリー」を構築することが、まさにマーケターや企画者には求められているわけですが、これは「積上げるもの」ではなく、「削り出すもの」であるべきだと僕は思うのです。
そして、本書は、まさにその「削り出し」の結果をまとめた一冊だと僕は感じています。
高千穂は、『日本書紀』や『古事記』にも登場する神話の土地。
アマテラスが隠れたと伝えられる「天岩戸」や、八百万の神々が会議をしたという「天安河原」も、神話が生まれて二千年以上たった今でも、大切に残されている。
それだけではない。
「ここで暮らすものにとって、いちばん大きなイベントが秋から冬にかけて行われる『夜神楽』です」(中略)
「アマテラスが岩戸に隠れしまい、世界は真っ暗になりました。世界に光を取り戻すため、アメノウズメノミコトが躍ったのが、夜神楽のルーツなのです」
ここでは、神話は語り継がれるだけのものではなく、暮らしの中に今も生きている。
そんな神のいる土地、で、神話と共に生きている人々をクローズアップしながら、高千穂の精神世界を浮き彫りにしていきます。
「このあたりの人たちは、屋外でお酒を飲むとき、まずはじめに少し地面にまくのです」と、高千穂神社の宮司は語る。
「これは何かというと、大地の神様にお供えをしているのですね。(中略)ここでは、生きている人間がイチバンではないのです」
あるいは、
「ここの雲海に魅了されて、毎年一ヶ月くらい高千穂にこもる同業者がいるんですよ」と、カメラマンが言う。
「レンズを通して山や川や木々を見ると、本当に、一滴の水や一粒の砂にも何かが宿っているような気がします。それらが『私たちを上手く撮ってみろ』と挑発しているような。(後略)」
そして、その人たちの焼酎とのかかわりに触れます。
「私が小さい頃は、お店で食べ物を買ったことはほとんどありません」と、初老の男性は言った。
高千穂では、人が集まると、家で飼っている鶏を絞め、まるやきにしたり鍋にしたりして振る舞った。(中略)彼らの生活の場は、自分の畑であり、近くの山や川だったのだ。
「晩酌で飲むのは、焼酎です。お祝いの席で乾杯するときも焼酎だし、神社に供えるお神酒も焼酎です。」
あらためて見てみると、高千穂の郷土料理は、どれも焼酎に合うものばかりだ。
こうして、神話の地における焼酎の存在を伝えた後に、今回の新作焼酎「高千穂 零」について語られます。既にそこにあるもの、をうまく削り出す・浮き彫りにする。ないモノを作るのではなく、そこにある「必然性」を語る。このコンセプトブックは、また、「高千穂 零」というプロダクトは、そういうアプローチでつくられたのではないかと僕は想像します。
何に拘るのか。何を目指すのか。そもそも、何故、黒一色なのか。それらについては、是非、この本を手に取って読み、ご自身で感じていただきたいと思います。瓶・ラベル・題字、それら全てが黒い「高千穂 零」と同様、このコンセプトブック「高千穂」もまた、表紙から中のページまで、全て黒一色で統一されています。美しい。その拘りを感じてください。
「高千穂 零」を飲んでみた
とはいえ、一番大事なのは酒です。コンセプトが冴えわたっていても、酒として不味ければ残念なことになります。というわけで、実際に、コンセプトブックを眺めつつ、一杯飲んでみました。
眺めてみる:
見た目は、黒い瓶に黒いラベル。敢えて「透明の塗料」で書いたという黒い文字は、しっとりした質感で、静かな自己主張をしています。コンセプトブックと、まさに同じ質感です。
飲んでみる:
長期熟成の麦焼酎とのことでしたので、想像していたのは黄金色の液体でした。しかし、漆黒のボトルから出てきたのは無色透明な液体。めちゃめちゃビックリしました。
そして味わいは、非常にクリアで雑味なし。 麦であることが、後味まではわからないくらいのクリアさです。麦臭さや独特の香ばしさが、飲みこんだ後に、ちょっと遅れて控えめにやってきます。僕はロックで飲みましたが、キンキンに冷やしてストレートで飲んでも良いくらい。(まちがいなく、すぐに酔っちゃうけど。)
また、山崎晴太郎氏曰く、これからの季節はお湯割りでも良いそうです。確かに、香りが際立ち、非常に良いだろうなと思います。試してみよう。
というわけで、「酒」「焼酎」としても、非常にクオリティの高い一品となっているこの「高千穂 零」。
本書を眺めつつ、悠久の時間を語り継がれてきた神話の世界に思いを馳せながら、「高千穂 零」の盃を傾けるのは、非常に趣深いと思います。そして、その際に、自社のプロダクト、サービスにおける、真に語るべきストーリーはなんなのか、をじっくりと考えてみてはいかがでしょうか?
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