第2回:ビッグデータの失敗事例/「会社を強くするビッグデータ活用入門」を振り返る
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- POSTED : 2014.10.15 09:01
f t p h l
目次
知りたいのはビッグデータの成功事例? ビッグデータの失敗事例?
アウトカム(Out Come)を考えた方が手っ取り早い
前回の振り返りを簡単に行います。ビッグデータ活用は最終的なビジネスの目的を求めると、活用する企業の事業強化になればよいと言うことになります。そのように考えると、このデータが何に使えるのかを考える一方で、その企業が強くなるためには何が必要であり、そこにどのようなデータ活用の方法があるのか、と言う流れで考える方が手っ取り早いと言う考えに行き着き、結局のところたった2つの考えでビッグデータの使いどころが検討可能であると言う話をしました。
- 企業が一番強くなるポイントでビッグデータを使え。
- 大量データであってもデータをタイムリーに収集分析できる利点を生かして事業構造を正確に把握し、PD(CA)∞サイクルを高速に何度も回せ。
ビッグデータ活用の成功事例と言うと、得てして具体的にどのように使っているかと言う話になりますが、使い方は企業によって千差万別になります。同じ使い方をしても、ある企業に取っては成功事例にもなるし、失敗とまでは言わないまでも、効果が出なかった活用例になることもあります。これらは本書でも語られていますが、失敗するケースは本質的な企業の競争力強化につながらないプロセスや領域にビッグデータを活用しているからです。大事な点は「ビッグデータをどう使っているか」ではなく、「どのような背景を踏まえて」、「どのような検討アプローチを経て」、「どのような活用の仕方をしているか」と言うことになります。
ビッグデータの失敗事例
ビッグデータ活用の成功事例と同様に、「ビッグデータをどのように使うと失敗しますか?」「ビッグデータ活用の失敗事例を教えてください。」と言う質問を受けることも多々あります。こちらは成功事例の裏返しとして、企業に取って競争力強化につながらない領域で活用すると効果が低いので、得てして失敗に終わると言う話をしております。ここでの失敗は「投資対効果(RoI)」が合わない、効果の規模が小さい、企業の競争力強化につながっていないと言うことを意味しています。
例えば、顧客分析を行うケースを例にとりましょう。売上げの1%しか占めない顧客セグメントを一生懸命分析して、5割売上げを増やしたとしても、全体の事業に占める割合は0.5%に過ぎません。一方で、全体の売上げの8割を占める顧客セグメントなら、10%の改善で、全体の8%の売上げ向上に寄与します。このような簡単で明白な内容なら誰もデータ活用の領域を間違えることは無いのですが、これが企業全体に及ぶデータ活用になると、ほぼ競争力の強化に意味の無い領域のビッグデータ活用に邁進する企業が出てきます。そういった企業にありがちなのが、上司や社長の一言で、「うちもビッグデータ活用をやれ」と言われて、ビッグデータ活用に取りかかる企業です。もしくは、現場の担当者の方々から検討の機運が高まるケースでも、せっかく使っていないデータがあるので、何かに活用できるのではないか、と言うことから検討を始めるケースです。正論で言えば、使わないよりは使った方が良いのですが、手段であるべきデータ活用ですが、使うことが目的化してしまうとろくなことが無いと言うのが本音です。古くはIT活用が手段ではなく目的化するなどと言う時代がありましたが、残念ながら時代は繰り返すようです。
次々と生まれるビッグデータ活用事例の専門家
ビッグデータを使って何かをやりたい。でも、その”何か”は分からない。でも、その何かは分からないが、きっと幸せの青い鳥は存在するはずだ。まずはその青い鳥を探し求めることから始めたい。それを探すにはまずは世の中の事例を知ることが必要だ。事例100連発、千本ノックをすればきっと自分(自社)にとっての最高の幸せの青い鳥が見つかるはずだ。よってまずは世の中の事例を知りたい。知るところから始めないと何も始まらない。むしろ、事例さえ知れれば、幸せの青い鳥は見つかるはずだ。と言う狂信的な事例信者になっている方がたまに存在します。そういった方々は、ビッグデータソリューションを標榜しているベンダーさんから世界中の各社の事例を収集して、これは外国の企業だからうちには当てはまらない、これは業界が違う、これはもう知っている、などと次から次へと事例を漁り続けた結果、ついには事例のプロになりつつある方も存在しています。笑
他社事例はあくまで他社の事例です。本質的には、「事例の企業はどのような観点が競争力強化のキードライバーであったのか」、「そこにビッグデータをどのように活用、適用したのか」と言うことが論点になります。どう使ったのかは、結局は「なぜ使ったのか」にまで推察を行い、その活用の本質にまでたどり着かないとあまり意味がありません。
まずは作文でも良いから企画書を作ってしまう
弊社がお手伝いをする際には、ビッグデータ活用の本論を議論する前に、最後に作るべきビッグデータ活用の企画書を相当な思い込みベースの作文でも良いので、まずは作ってもらうことから始めることがあります。まずはもの凄い初期仮説(思いつき)でも良いので、まずはこの項目を埋めて作文して行ってくださいと言うやり方です。そして、ビッグデータを活用してサービスを提供すると言う立ち位置で企画書を作ってみてくださいと付け加えます。
作文に入れるべき項目(参考例):
- 本プロジェクト(ビッグデータ活用プロジェクト)の背景と目的
・プロジェクトの位置づけ
・既存事業/本業との関連 - 市場理解
ビッグデータを活用する事業/対象市場の状況
参入の障壁と要件
勝ち抜くための要件
事業の特性 - 事業モデル
戦い方の基本コンセプト
基本的なビジネスモデル
サービスモデル/内容
自社(既存事業)に対する意味合い
事業実施に際してのリスク - オペレーションモデルと必要となるインフラ
オペレーションモデル
必要となるインフラ - 収益シミュレーション
- 実行計画
これを埋めようとした時に、実は一番最初に筆が止まります。作文を書く際に、自らがサービス提供者であると想定して書く際に、サービスの受け手であるクライアント企業(本来は自分の会社や事業)にとって何のためのプロジェクトなのか?何を狙いにしているのか?何をどの程度達成することが目標なのか?そもそもこのプロジェクトの目的ななんなのか?と言う当たり前のことが詰まっていないとこのような作文が作れないからです。
どのような仕組みで行うか、どのようなオペレーションで行うか、ざっくりの収益シミュレーションは、などはいくらでも作文で書いて行くことができます。ですが、背景と目的をきちんと作文してくださいとなると、さすがにふと我に返ることが多いようです。まずは作文をしてみて、1〜3が埋まるようならビッグデータ活用の仕組み(システム)や体制(組織)の議論を行えば固まります。ですが、多くの場合がそうですが、「ビッグデータやれ!」から始まっていると、1を作るところから始めないと何も進まないことが多いのです。その場合に、いきなり仕組みや体制から入ると確実に失敗事例に進むことが見えています。まずはこのような当たり前の議論からでも、実は当事者になるとなかなかできない現実があることをご理解頂ければと思います。
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