【”考え方”を考える】フレームワーク本の功罪と、コンサルタントの使いどころ

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フレームワークは万能ではない。使いどころが重要。

本日は、巷にあふれるフレームワーク本を、どのように活用すべきかについて考えてみたいと思います。

世の中に「フレームワーク」と呼ばれるものは数多くあります。そして、それらを整理・一覧化した「フレームワーク本」がたくさん出版されています。この「フレームワーク」はコンサルタントが欧米から持ち込んだり、自分で開発したりしたもので、「問題解決」のための道しるべとして非常に有用です。

しかし、フレームワーク本を読んだからと言って、問題解決ができるようにはなりません。何故なら、「フレームワーク」が問題を解決するのではなく、問題を解決するのはあくまでも「フレームワークを活用した”ヒト”」だからです。

(前提)コンサルタント=問題解決のプロ

「コンサルタントは、問題解決のプロフェッショナルである。」あるいは、少なくとも、そう「あるべき」だと僕は思います。

コンサルタントというのは、非常に特殊な技能者であり、コンサルティングファームは、特殊技能集団です。基本能力として「賢い」ということが求められる業界なので、「それなりに潰しが効く人材が多い」というのも特徴です。

しかし、万能ではありません。特殊な技能を持っているので、それが活きる局面で使えば、切れ味鋭い刃物になりますので、大抵のものは切れますが、「なんでも切れる」わけではありません。たとえば、高枝切バサミでしか届かない柿の木の枝は、日本刀では切れません。また、魚を捌くなら、日本刀よりも包丁が良いでしょう。紙を切るなら、包丁よりもハサミが良いのも自明です。コンサルタントは「切れ味鋭い刃物」ですので、使う側が、「何を切りたいか」を選択することが重要になります。なんとかとハサミは使いようってやつです。

話を戻しますと、「コンサルタント=問題解決のプロ」ということは、つまり「コンサルタントの特殊技能=問題解決力」ということになります。

ただし、「コンサルタントは、問題解決してくれる=とにかく”答え”を教えてくれるはず」と思って依頼した場合、残念なことに期待通りの結果が得られず「コンサルはやっぱ使えねーな」となってしまうことが非常に多いです。

なぜ、そんなことになってしまうのでしょうか。

問題解決におけるコンサルの使いどころ

問題解決は以下の、3つのステップに大別されます。
(1)問題定義
(2)問題解決手段の明確化
(3)問題解決の実行

コンサルタントは、そのうち(1)と(2)のプロです。つまり、「問題を定義するプロ」であり、「そこで定義された問題を解決する手段の明確化を行うプロ」です。そして、コンサルタントの手元には問題を定義するための「フレームワーク」がたくさんあります。また、定義された問題の解決手段を模索するための「フレームワーク」もあります。

然しながら、「いきなり答えがポンとでてくる」というのはあり得ませんし、解決のためのすべての手段をコンサルタントが用意している、というわけでもありません。

尚、(3)をやるのは、あくまでも実業の人です。コンサルタントが「お手伝いする」のは可能だと思いますし、「アウトソーシングで受ける」というのも可能ですが、コンサルティングではないと思います。「え、解決までしてくれないの?」という気持ちを抱くのもわからなくはないのですが、卑近な例で考えてみましょう。

ディズニーランドでデートするとしたら・・・

例えば、ディズニーランドでのデートプランを雑誌から完コピした場合を想像してみてください。いくら、プランは書いてあっても、実際のパレードの場所取りやアトラクションの順番待ちは自分でやるわけですよね。

つまり、”コンサルタント”にできるのは「効率的にアトラクションを回る」「待ち時間を如何に楽しく過ごすか」の提案および、そのための準備のお手伝い、までです。(もちろん、お金を貰えば、代わりに場所取りしたり、順番待ちをしたりしますよって話ですが、それらはコンサルティングではなく、また別のサービス(例えばアウトソーシング)です。)

フレームワーク本の功罪

「いきなり答えがポンとでてくる」わけではない、と先ほど述べました。もう少し具体的に言うと「おれは困ってるんだ。さぁ、助けろ。」という投げかけをしただけでは、コンサルが”求められている答え”を持ってくることはありえない、ということです。

ディズニーランドの例を続けると、前述の3ステップの【(1)問題定義】の場面において、クライアントが「ディズニーランドに行きたいが、子供連れだと楽しめないんだよね」と発言したとしましょう。そうすると、それをトリガーにして、以下のような問いを投げるのがコンサルタントの初期動作です。

  • 子供と一緒に行きたいのか、親だけで行きたいのか
  • どういう部分が子供と一緒だと楽しめないと感じているのか
  • そもそも、なぜ、サンリオピューロランドでもなければ、富士急ハイランドでもなく、ディズニーランドなのか(あるいは、ディズニーシーではダメなのか)

これらの問いは、「クライアントに”何を考えているのか”を教えてもらう」ことを意味します。文字通り「問題の定義」をするわけですね。

こういう場合に「何を質問するべきか?」という「型」も、ひとつのフレームワークです。こういう「型」を教えてくれるという意味で、フレームワーク本は非常に有効です。

フレームワーク本が教えてくれないこと

巷に溢れる「フレームワーク」本は、「このフレームワークに沿って考えれば大丈夫」というところを強調して書かれる傾向にあります。しかし、その際に「問題定義のフレームワーク」と「問題解決手段の明確化のためのフレームワーク」をごちゃまぜにしていることが多いです。

また、「フレームワークが万能だから答えにたどり着ける」のではなく、「フレームワークをうまく使うスキルがあるので答えにたどり着ける」のだということを、もう少しちゃんと伝える必要があると思います。

フレームワーク本の抱える最大の課題は「自分が、いま、どのフレームワークを使うべきか」が、フレームワーク本だけではわからない、ということです。この状況を打破するためには「フレームワークを自分自身で実際に使ってみる」しかありません。また、反復練習のためには、それらの書籍に記載されている他社事例を”自分事”として真剣に読み込み、理解していくことが非常に重要です。(特に、事例に関しては「自社と違う点」を探すのに注力してしまい、「似ている部分」や「事例の本質」をみない人が多いように僕は感じています。勿体ない。)

本は読み手を選べません。(あるいは、読み手を選んで書くと売れません。)その結果、書店には「わかりやすい本」がたくさん並びます。しかし、だからこそ、読者は「わかりやすく単純化している」ということのみに踊らされず、時には「骨太な本」を手に取って読んでみるべきです。一見、小難しくて取っつきにくい本も「(内容的には)非常にシンプルにまとめられている」ものです。怖がらずに攻めてみましょう。

まとめ:概況把握&辞書的に使おう

事例やフレームワークに触れる際には、その”表面”だけをなぞるのではなく、それらを自分なりに噛み砕いて実体験と重ね合わせ、日々の業務になんらかの変化・改善をもたらすことを目指そうとすべきなのです。その結果、「あなたにとって最適な『フレームワークの使いどころ』≒『コンサルタントの使いどころ』」が見えてくるはずです。

これを踏まえ、フレームワーク本は、以下の2つの目的のために活用するのが良いと僕は思います。

  1. フレームワークの種類(=考え方の全体像)を捉えるための地図
  2. 自分の困りごと・課題に適したフレームワークを探すための辞書

冒頭で書いた通り、フレームワーク本を一冊読んだからと言って「フレームワークが使える」ということにはなりません。ですので、あくまでも「地図を描く」ためのインプットにする、もしくは、自分の困りごとを「その地図にマッピングする」ために用いることが望ましいでしょう。

フレームワークを”自らカスタマイズする”くらいの気概を持って課題解決に臨むことが、結果的にフレームワークを深く理解することにつながります。ローマは一日にして成らず、しかしその一方で、全ての道はローマに通じています。迷わず行けよ、行けばわかるさ、ですよ。

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