ギックスの本棚/ハーバードの自分を知る技術 ~悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ~(ロバート・スティーヴン・カプラン 著|福井久美子 訳|阪急コミュニケーションズ 刊)
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- POSTED : 2014.07.21 10:06
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自分の人生は、誰のためにあるのかを問え。
本日は”ハーバード”という名前を冠しておけば、きっと売れるんじゃないか、という出版社の狙いがあからさまな自己啓発本「ハーバードの自分を知る技術」を読み解きます。(ちなみに、原題は「What You’re Really Meant to Do: A Road Map for Reaching Your Unique Potential」です。ええ。大学名は入ってないですね。)
成功を目指す=成功を定義するところから
本書の冒頭(まえがき)に、非常にいいことが書いてあります。
周囲が<成功>だというものを鵜呑みにせずに、あなたが自分で<成功>とは何かを定義する必要があります。
著者がこの本で一番言いたかった事は、この一文に尽きるでしょう。(あとは、テクニック論です。)もう少し具体的なことを述べているセンテンスを引用します。
置かれている状況とは無関係に、人間にはその人にしかないスキルや個性があります。これまでの人生、長所、短所、夢、悩みもそれぞれ違います。
だとしたら、理想の道も人それぞれ違うと思いませんか?なぜ私たちは他人をまねるのですか?画一的に定義された<成功>をめざすのはなぜですか?
王道を行く「自己啓発」本
本書の想定読者は、社会人経験者で、ある程度の実績を積んだ人です。それらの経験と、それによって獲得した現在のポジションがある上で「少し違う仕事内容」に行ってみたいという漠然とした思いがある人、が対象です。就業経験のない学生向けにも多少の配慮はありますが、正直、そのまま使える内容だとは思えません。
(もしも学生の方が読む場合は「自己分析の重要性を深く知る」という意味では非常に使える本です。その場合、読むべきは第2章と第4章です。彼を知り己を知れば百戦あやうからず、って話なわけです。まずは己を知るところから始めましょう。)
自己分析を「具体的に」行う
本書では、定性的にならざるを得ない「自己分析」を、できるかぎり「具体的」に定義することで、実践し易くしています。
例えば、スキルを棚卸しよう、という話では「スキル」の具体例がたくさん挙げられます。
- 文章を使ったコミュニケーション
- 会話術/プレゼンのスキル
- 対人関係に関するスキル
- 人の話を聞く能力
- 分析力
- 体系化する能力(物事の優先順位を決める能力を含む)
- 他人に仕事を任せる能力
- 営業力
- 人間関係を築く能力
- 交渉力
- 建設的に他人と対立する能力
- 指導力
- 数学力、クオンツ分析のスキル
- 物事を概念化して、本質を見極める能力(大局的に物事をとらえる能力)
- 身体的能力(仕事に関係する場合)
- 外国語の運用力
- 技術的な知識と専門分野があること(会計や科学技術などの専門分野を含む)
あるいは、メンタルモデル(仮に○○だったら、何をするか。また、どうしてそうするのか。を考える事)の例も非常に具体的です。
- 仮にあなたがあと一年しか生きられないとしたら、何をして過ごしますか?その結論から、あなたが好きなことは何で、やりたいことはなんだと思いますか?
- 仮にあなたにありあまるほどお金があるとしたら、どんな仕事やキャリアを追い求めると思いますか?
- 将来的に成功することが分かっていたら、今どんな仕事を探すと思いますか?
- 子どもや孫に、仕事でどんなことを成し遂げたと話したいですか?あなたのキャリアについて、どう説明しますか?
- 第三者として自分にアドバイスするとしたら、キャリア選択について何と言いますか?
また、自分を理解するために「自分史」を書いてみる、という際にも、こんなことを言われます。
勝者の口調
一般的に、あなたが誰かに向かって話すときは、主に「勝者の口調」で話します。あなたにまつわる楽しい話をするときです。ピンとこない人は、戦況の候補者の街頭演説や広告を思い出してください。彼らはポジティブで共感的な目線で自分の話をします。では、勝者の口調であなたの自分史を書いてみましょう。
(中略)
敗者の口調
私の過去について「敗者の口調(または自己不振の口調)」で語る声があります。ご想像の通り、この口調ではそれほど輝かしい話にはなりません。就職面接の場や本の「著者紹介」の欄で、この口調を見かけることはめったにありません。これは私の頭の中に聞こえてくる別の声なのです。
(中略)
私たちがすべきことは、こうした口調の違いに気づき、これらの声が私たちの行動にどう影響するかを理解することです。重要な決断を下すときには、どちらの声が聞こえてきますか?ミスをしたときや、重いプレッシャーにさらされたときは?公開するような行動を取ったときや、やりたいことを行動に移せないときは?その声はあなたの意思決定、理解力、行動にどう影響していますか?
とても実践的で、イメージしやすいと思います。これらの例に則って、自分で深く考える、ということが「ちゃんと自己分析をする」ということを意味します。
価値観 と 境界線
また、「価値観」と「境界線」という概念には非常に感銘を受けました。この2つは「独自の哲学」の構成要素であり、これをあらかじめクリアにしておかないと”信念”がブレたり、単なる”優秀な人”に留まって”一流の人”になれなかったりする、と説かれます。(そして、クリアにするためには「紙に書け」と指示されます。正論です。)
価値観は人生の指針です。価値観は私たちの行動を左右し、私たちの人格を形作ります。価値観とは、たとえば人生のさまざまな側面に対するあなたの考え方の事です。
境界線は価値観よりもわかりやすいかもしれません。簡単に言えば、境界線とはあなたが越えないと心に決めている倫理的な一線の事です。
真剣に仕事に取り組むならば、そして、真剣に人生と向き合うならば、この「価値観」と「境界線」の概念は非常に重要だと思います。これがないと、自分の意思決定の理由を他人に説明できないどころか、自分自身が何かを判断する際に”迷子”になってしまいます。
そして、それを軸にしてキチンと考えて選び、その「選択に責任を持つ」ことが重要です。
人生の責任者は自分だと認識してください。(中略)あなたの運命はあなたが握っているからです。
それには、曖昧な選択を行わない事です。物事を選択するときには、必ず選択肢をはかりにかけて、はっきりと意識しながら選択するのです。
ちゃんと「やる」ことがとても重要
過去、「ギックスの本棚シリーズ」で様々な本を取り上げた際にも書きましたが、こういう本を読む際、必ず意識しないといけないのが「やらないと意味が無い」という事です。(興味のある方は、過去記事の「ゼロ秒思考」、「頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?」、「なぜ一流の男の腹は出ていないのか?」、「北斗の拳で英語を身につける本」、「夢をかなえるゾウ」などの書籍紹介及び、「思考の型|ダイエットをプロジェクトとして捉える」をご参照ください。)
自己啓発というのは、本を読んで達成されるものではありません。どの本を読んでも良いのですが、その本に書いてあることを「愚直にやり通す」ことが非常に重要なのです。
ちなみに、僕は実際にやってみてます。(恥ずかしいので内容はモザイク処理してますが)
「若手」の悩み事解決には「夢をかなえるゾウ」の方がオススメ
本書は、常に自分の頭で考える、という姿勢を持った方には大変オススメできる一冊だと思います。しかし、その一方で「言われたことをこなすのは得意」「指示された内容=自分の責任範囲だと思っている」というタイプの人は、この本の「考える」という部分を実行に移すにあたって、”本当に独りでやりきれるかどうか”は甚だ疑問です(カウンセラーがいれば良いのでしょうが)。自分はそういう傾向にあるかもなと思う方は、「夢をかなえるゾウ」を読むことを強くお勧めします。→関連記事「ギックスの本棚/夢をかなえるゾウ」
上記の関連記事にも書いていますが「夢をかなえるゾウ」は、自己啓発本として非常に優れています。「いわゆるサラリーマンの世界」の「若手」あるいは「中堅」くらいに位置する方に”しっくりくる”一冊です。是非、お試しください。(くどいようですが、ご一読ください、ではなく、お試しください、なのが重要なポイントですよ。)尚、「中堅」を過ぎて「役職持ち」「幹部」を目指すフェーズにいる方には、本書「ハーバードの自分を知る技術」の方が共感しやすいように思います。
ぶっちゃけ、この2冊に限らず、自己啓発本に書いてある【内容】は大体同じです。後は、どれがフィットするかという問題が2割くらいあるものの、残り8割=大部分は「実際にやってみるかどうか」が鍵なわけです。
本書のクロージングで、アインシュタインの言葉が引用されます。
私の好きな格言の一つに、アルバート・アインシュタイン博士の言葉がありますーー「重要なものすべてが把握できるとは限らず、把握できるものすべてが重要とは限らない」。
この言葉をどう受け止めるかも、個々人の自由です。本書では「だから、自分で決めた道を信じて進めばいい」と続けられますが、僕は「だから、目の前にある方法論・手法を信じてちゃんと試してみればいい」と思っています。
要するに、【為せば成る(ことが多く)、為さねば成らぬ(のは絶対の真理)】 ということだと思うのです。いろいろ言い訳して逃げ道を作る前に、臆せずにトライする姿勢を持ちたいものですね。
ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ
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