アクセンチュア関一則氏対談⑤:「Direct to Consumer」の潮流 〜デジタルマーケティングの前に知っておくべきこと~
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- POSTED : 2014.06.13 09:00
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アクセンチュア製造・流通本部で一般消費財・サービス業界グループの統括リードを務められている関一則さん。営業・マーケティング領域を中心に、戦略策定から業務設計・システム化・変革実行推進まで、一気通貫でのCRM改革支援に対して非常に豊富な経験をお持ちです。本日は関さんにデジタルマーケティングに関してお話を伺ってまいりました。
第5回:データアーティストのモデル
網野:
最後になりますが、Direct to Consumerやデジタルマーケティングとは関係ない話になるのですが、、、。
今ビックデータ業界界隈では、データサイエンティストは21世紀に最もセクシーな職業になると言われています。実は私はデータサイエンティストは最もセクシーな職業にはならない論者なんですけども。笑
統計が分かる統計屋さん、大量データをハンドリングできるRDB屋さんは昔から存在していました。結局はビジネスがわからなければ、「セクシー」に活躍できる場は限られてしまうと思っています。ですが、世の中にはスーパーマンはいないので、ビジネスもわかるし、それこそストーリーも描けるデータサイエンティストなんて人は日本では何人いるのか分からない。そのため、うちの会社では役割分担してチームで取り組むようにしています。データサイエンティストにブリッジする役割として、仮説を立案したり、分析結果をシンセシス(統合)したり、解釈する役割として「データアーティスト」というロールを作りました。実はそのロールのモデルとなったのが関さんなのです。笑
若手のビジネスパーソンなどはそういった「思考法」に興味を持つ方が多く、「どう考えたんだろう」と言うことに興味が集まります。もう、グダグタな質問になりますが、関さんはいつもどのような考えかたで、データアーティスト的な気づきを得ているのでしょうか?笑
関:
じゃあ、ここからは私もリラックスして答えますね。笑
私が思うのは、「とにかく遊べ、だけど常に考えろ」と言うことでしょうか。笑
家に閉じこもるのではなく、外に出ていき遊びながら鍛えるのだと思います。これはどんなオケージョンにも使えます。私は寝ている時だって考えています。夢を見て、夢の中でも考える。さすがに夢の中までは冗談ですがね、それくらいの気持ちで常に集中して考える日常を心掛けてます。笑
飲みに行った場合も、最近の若い人はどのような物に興味が有るのかなど感心を持って探るようにしていますし、また話す相手が喜ぶようなコンテンツなども会話をしながら探っています。例えば、ワイン飲みながらガムを噛むような人に出会ったことある?
網野:
いや、無いですね。笑
関:
私は一度会ったことがあり、以来飲みに行くたびにいろいろな人に聞いてみています。おそらく、外で遊ぶ場数が増えていけば、そういう経験にも出会え、そしてまた新たしいコンテンツになるのだと思います。飲んでいる時にも、その場の会話を覚えておける記憶力も重要なのかも知れませんね。
網野:
なるほど。それはなかなかハードルが高いですね。笑
いろいろなことに興味関心を持つと言うハードル、適切な質問を繰り返せるというハードル、聞いたことを覚えているというハードル。関さんの仮説思考のプロセスはそういった引き出しの中からつながって出てくる感じでしょうか?
関:
仮説思考の仮説の出し方なのかもしれませんが、こうなったら嬉しいな、というものも「仮説思考」だと思うのですよね。そして、その仮説の出し方は自分の実体験や、遊んでいる時や、仕事しながらなど、常に鍛えているということだと思います。
網野:
そういうのを当たり前に習慣化してできるというのは、そもそもそれ自体が才能であるとも言えるわけですが、そういった取り組みは先天的なものでしょうか?それとも、後天的なものでしょうか?
関:
いや、実は昔はできなかったですよ。アクセンチュア入社当時はSE(システムエンジニア)だったのですが、その後戦略グループに異動しました。最初の半年は上司に叱咤激励されて仕事について悩みながら、常に考えるようになっていったような気がします。その癖が染みついて、習慣化して、何かを見た時にパッと考えられるようになったのです。格好良く言えば、こんな分析してみようとか、こんな仮説考えてみようとか、常に考える楽しさがあったとも言えますが、上司をがっかりさせないようにという思いから、必要に迫られて、身に付いていったとも言えます。笑
網野:
なるほど。そんな時代もあったのですね。関さんはものすごいアイデアマンですから、先天的に考えられる人だと思っていました。よく遊び、よく考えろと言う以外に何かアドバイスはありますか?
関:
うーん、なんだろうか。身近な体験を自分なりに考えて構造化しておくことでしょうか。例えばどちらのブランドを選ぶのか、と言うことに対する仮説も、自分だったらどのように選ぶのかだけでなく、ある程度ロジックで理由を列挙できますよね。その自分の行動や考えと、ロジックでの展開の組み合わせたものが仮説になると思います。自問自答しながら、仮説をつくる感じかと思いますよ。
網野:
仮説は最後のメッセージドリブンで降りてくる感じでしょうか?
シンセシスと言うか、「要はこうだよね?」のメッセージから思いついてくる感じでしょうか?
関:
そうですね。できれば、そこにどんな面白い要素を加えられるか、ということですね。
網野:
戦略コンサルタントを経験していると、面白さの中にも常にビジネスインパクトも踏まえて考えていますが、統計から入ってしまう自称データサイエンティストは、そこが抜けがちにも見えるのですよね。
関:
なるほどね。そう考えると、データアーティスト改め、デジタル・イノベーション・インキュベーターというとこになるのではないですか?
網野:
え? 解説をお願いします。笑
関:
どうせ、アーティストをするなら、データだけに絞らず、ビジネス全てにアーティストすればいいじゃないかと思いますよ。つまり、データ+αをアーティストすればいいなと。データサイエンティストがセクシーと言われているのは、ある意味若い世代にしか語れない感じがあるからセクシーという側面もあるのではないでしょうか。それであれば、デジタルな領域でイノベーションをインキュベーション(醸成)していくことができればセクシーなのではないでしょうか。笑
網野:
デジタルな領域でイノベーションをインキュベーションと言われると、グイグイとセクシーな感じがします。笑
関:
最初の話に戻ると、Direct To Consumerと言うキーワードに対する取り組みはこういったことだと思います。商品開発自体も変わらないといけないですね。より消費者が喜んでくれる商品を、業界全体でコンバージェンスしてでも作ることができれば、そこにストーリーが生まれます。やはり、ストーリーは後付では駄目ですね。結局イノベーションは様々な要素の組み合わせから発生するわけですし、仮説も組み合わせから生まれますし。MECEとかロジカルシンキングとかどれかひとつだけじゃだめで、知識を組み合わせると最終地点に行きつくのでしょう。そして、アーティストは時にサイエンスを用いるだろうし、アーティストは遊ぶ事も重要な仕事ですし。笑
サイエンティストより、アーティストの方がずっとセクシーですよね。だって、遊びが仕事につながるのだから。つまり、データアーティストであることがセクシーなのではなく、データアーティスト・ビヘイビアがセクシーということです。
網野:
確かにその通りですね。
今日はありがとうございました。
連載記事一覧:
- 第1回:Direct to Consumerをもたらす環境変化
- 第2回:消費者に感動を与えるストーリー
- 第3回:公正な時代のマーケティング活動
- 第4回:デジタル・ダイレクト・マーケティング&セールス
- 第5回:データアーティストのモデル
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