プロジェクトマネージャーを超える役割。DI変革Divisionが求めるビジネスプロデューサーとは

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ギックスでは2024年7月、組織再編に伴い4つの組織を新設。その中の1つ「DI変革Division」は、クライアントがデータインフォームドな行動様式へ変容し、今まで以上に競争力を強化していくことを目指して、伴走支援を行う組織です。

ギックスがデリバリーするプロジェクトそのものが大きく変容していく中で、DI変革Divisionが求める「ビジネスプロデューサー」とはどのような役割なのか。
代表取締役CEO 兼 DI変革Division長を務め、自身も長年戦略コンサルティングファームで数々のプロジェクトの責任者を務めた経験を持つ網野に聞きました。

実業伴走屋:DI変革Divisionのビジネスプロデューサー像

―現在、DI変革Divisionの採用ではプロジェクトマネージャーではなく「ビジネスプロデューサー」という役割で募集をかけています。その意図や背景、2つの役割の違いなどご説明お願いします。

網野:ギックスを創業して12年経ちましたが、最初は「クライアントが持つデータを分析してその利活用を検討し、業務適用を提言していく」という、現在「DIコンサルティング」と名付けている仕事から始まりました。

しかし、この5~6年くらいは「顧客や事業のデータを分析し、そのデータに基づく戦略を検討」した段階で完了する一過性のプロジェクトは徐々に減ってきました。

戦略や利活用の方針を検討して、PowerPointでプレゼンして合意を得てからが、まさに終わりなきプロジェクトのスタート。具体の実行策を検討し、必要に応じて仕組みも構築し、その事業の実行支援まで伴走していく。クライアントの事業そのものに織り込まれ、ビジネス成果そのものにコミットして動いていくことが求められています。

つまり、データ分析による提言屋から「実業伴走屋」へシフトしていく中で、プロジェクトマネジメントはスキルとして必要であるが、それだけでは務まらない役割が求められているのです

―クライアントから求められた回答を提言する役割から、その後の事業へも踏み込んでいく役割が求められるということですね。

網野:提言屋から実業伴走屋になるために、キーワードは3つあります。

1.プロジェクトのQCDだけでは負け
2.一気通貫支援は事業そのものへのコミット
3.営利企業なので自社も稼ぐ

―1つめの「プロジェクトのQCDだけでは負け」とは、どのような意味合いでしょうか

網野:一般的な戦略コンサルティングのプロジェクトであれば、テーマや期待する課題解決を切れ味鋭い示唆で提言してPowerPointを作りプレゼンしてクライアントが意思決定してくれたらそこで終了です。一方、システム開発プロジェクトであれば、クライアントが提示するRFP(提案依頼書)をもとにその性能を担保する形でシステムを構築し、納品したら終了です。いわゆるプロジェクトマネジメントとは、決められたQCD、つまり品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)を守り完遂すること。当然ながら当社も案件ごとに提案して、プロジェクト型で推進するので、各プロジェクトに関してはQCDは必須です。そこは大前提。

ですが、当社が担当するテーマは、新たな業務の提言や新たなサービスにつながるものが多く、やった方が良さそうだけど未知の取り組みのため、確実に成功する保証はありません。その「不確実性が高いが、実行する意味がありそうなテーマ」を判断し実行していく必要があります。
そのため「会議室で拍手喝采、さあいきなり巨大な投資を確保して、時間をかけてシステムも業務プロセスも構築して、一気に勝負するぜ!」と言うことにはなり難く、「筋のよい仮説であるが、本当に勝てそうか、それを実行できるか」と言う観点を検証することが必要になります。

極力リスクを減らしながら実行に結びつけるにはどのようなやり方が考えられるか。そこまで踏み込んで提言しないと、提言屋で終わってしまいます。
また、大企業は自社の勝ちパターンを構築して圧倒的に勝ってきたから大きくなったわけで、スタートアップのように小さく始めて、試しながら、ダメなら閉じるし、ピボットするし、と言う進め方は、決して得意領域な訳ではありません。だからこそ、「実業伴走屋」が求められるのです。

スタートアップ型の機動力でクライアントの成長を一気通貫支援

―「新たな業務や新たなサービスにつながるような未知の取り組み」の実行には、大企業が培ってきた勝ちパターンと異なる進め方も含めて提言していく必要があるわけですね。その場合、その後の推進フェーズには必ずしもスムーズに行かないこともありそうです。

網野:ですので、キーワードの2つ目「一気通貫支援は事業そのものへのコミット」が必要になります。

株式会社ギックス
代表取締役CEO/DI変革Division Leader
網野 知博
慶應義塾大学卒業後、株式会社CSK(現SCSK株式会社)、アクセンチュア株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社を経て、 2012年、株式会社ギックスを創業。「あらゆる判断を、データインフォームドに。」を企業のパーパスとして掲げ、様々な業界、領域のビジネス判断へのデータ活用を推進。
長年の戦略コンサルティング経験に基づく事業構造の把握および事業拡大のための戦略策定能力に加え、社内に培われたデータサイエンスや最新テクノロジーを組み合わせることで、クライアントの日々の業務を「データインフォームド」なものへと変化させ、再現性の高い事業成長を支援。

当社はスタートアップから始まり上場まで来ましたが、当然ながら10戦10勝で来たわけではありません。2勝3敗、その3敗も早めに負けて、後の5戦も負けそうだから早々に逃げて5逃、と言う形で上場まで来ています。当社のようなスタートアップには、勝てたら美味しい筋の良さそうなビジネス仮説に対して、バランスを持って進める経験があります。

一方で、大企業は潤沢なリソース(優秀な人、各種アセットや施設、多額の金)を持っていますが、部署の壁、年度予算、期初目標と期末の評価、始めたら途中で止められない、などなど多くの制約が介在し、新たな取り組みに機動的な事業推進が行えない事情もあります。

それであれば戦略企画した後、クライアント側の事情も加味しながら、リスクが低く始められるように、当社がMVP(Minimum Viable Product:必要最低限の機能を備えたプロダクト)を作って実際に実業で試すやり方で、作戦の正しさと実行の実現性を試しながら進められる役割を担う形の支援を始めています。

顧客構造や事業構造を理解するために高度なデータ分析もする、データに基づき戦略を立案する、アルゴリズムも開発する、業務に適用できるシステム開発やアプリケーション開発もMVPレベルで開発する、実際に実用して試しながら戦略も実行計画もシステムも改善改修する、クライアントの社内事業に合わせてセキュリティ対応もする、クライアント都合のドキュメント作成もする。

一気通貫での支援とは、結局はクライアントが勝っていくために、そしてクライアントが保有する圧倒的に強いケイパビリティを活かすために、当社が得意する領域を活かしながら、共同でプロジェクトを推進していくことなのです。

―一気通貫の伴走支援において、成功した事例などはありますか?

網野:公表されている事例だと、JR西日本社との「しゃべれぽ」「西日本旅游攻略 tabiwa」、トヨタモビリティパーツ社との「AI整備見積りシステム」、エアージャパン社との「レベニューマネジメント高度化伴走支援」などになると思います。

しゃべれぽやtabiwaなどは成果という観点から見ると、ストラグル中かと思います(苦笑)。正直むちゃくちゃ苦労しています。

AI整備見積りシステムは4年以上の歳月をかけて、まさに社会実装され始めています。

エアージャパン社のレベニューマネジメントはこの秋から始まった取り組みですので成果が見えてくるのは春くらいからになると思います。ANAの子会社とはいえエアージャパンさんもスタートアップと言えます。やった方が良いことは沢山ありますが、金、人、リソースは限られます。そのような状況の中で、エアージャパン流の

レベニューマネジメントのやり方、使うデータ、可視化の方法、ビジネス判断の仕方、価格への反映など、共に考え、アルゴリズムを作り、可視化のダッシュボード構築、業務プロセスやオペレーション作り、そう言ったことを伴走支援させていただいております。さらにその支援フィーをコンサル費や開発費として頂戴するのではなく、成果連動型報酬と言う形にすることで、当社としても新たなチャレンジをさせていただいております。

  • ギックス提供のAIエンジンが、JR西日本提供 AIにより旅行計画を提案する訪日中国人向け観光型MaaS「西日本旅游攻略 tabiwa」に採用(2024/09/18)https://www.gixo.jp/news-press/25367/ 
  • ギックスとトヨタモビリティパーツ、「AI整備見積りシステム」を共同提供開始(2024/04/08)https://www.gixo.jp/news-press/24294/   
  • ギックス、「レベニューマネジメント高度化伴走支援」サービスの提供開始 〜ANAグループの新ブランド「AirJapan」との取り組み開始〜(2024/10/29)https://www.gixo.jp/news-press/25773/   

「クライアントへの価値提供」「自社も稼ぐ」のバランス感覚

―エアージャパン様との取り組みでありましたが、成果連動報酬などの新しいチャレンジが、3つ目の自社も稼ぐというというキーワードにつながるのですね。

網野:当社は営利も追求している上場企業です。クライアントを勝たせることを前提にサービス提供を行っておりますが、もちろん当社も収益を上げ成長することが求められます。

エアージャパンさんは分かりやすい例ですが、他の事例などでも、実は当社が一定の投資を行って仕組みを開発していたり、当社が保有する特許を活用する形でサービス開発を行ったりしています。

ですので、ビジネスプロデューサーによる提案は対クライアントだけに留まらずに、ギックス社内に対しても求められます。当社のリソースを活用する、つまり自身のプロジェクトへの投資を求める代わりに、将来的に当社がどのように収益を上げられるのかという提言を行い、経営会議や取締役会を通していく必要があります。クライアントの事業を共同で立ち上げて共同で収益を得るというやり方もあれば、当社が投資してサービス開発を行い、クライアントにローンチカスタマーになっていただききながらサービス構築をしていくというケースもあります。

ここで1つ目のキーワード、QCDに戻るのですが、つまり一過性のプロジェクトデリバリーではなく、クライアントの実業にも踏み込むし、ギックスの実業にも踏み込む、そう言った役割をこなせる方をDI変革Divisionでは求めております。

「提言」から「実業」へ:多彩な経歴が活きる新しい役割

―上記のような役割となると、今までにどのようなご経験をされてきた方がマッチすると思われますか?

網野:大きく4つのパターンがあると考えています。

当社の創業経営者は3名とも戦略コンサルティング出身です。戦略コンサルティングにおけるプロジェクトマネジメントのスキルは有効になると思います。ただ、当社は提言だけに留まりませんので、その先の一歩、クライアントも当社も含めて実業まで携わって行きたいという方には魅力的な役割になるはずです。

また、事業会社出身の方は、事業のオペレーションを回してきた経験があるため、切れのある提言をPowerPointで作って終わり、というコンサルタントになるより、当社が求めるビジネスプロデューサーの方が活躍する幅が広がると思います。

IT業界やSI業界の方々は、今まではクライアントの指示通りシステムを作ってきた役割から、そもそも当社として何を作ってそれをどのように使ってもらってクライアントに成果を出してもらうのか、という全く異なるチャレンジをする必要があります。ただ、システムを構築し、それを運用してきたという経験は、構想して終わり・提言して終わりのコンサルスタイルではない、当社のビジネスプロデューサーという役割にとって強みになると考えています。

そして、スタートアップ立ち上げ経験者などはすぐにでも適合できると思います。

―最後に採用候補者に向けて一言お願いできますか。

網野:ギックスを創業してからちょうど12年、データでコンサルする会社、データ基盤や周辺システムを開発できる会社から、クライアントの実業に関与しながら、自社の収益成長も目指すビジネスモデルに関与できる会社になってきました。

そのような役割を、今は“仮に”ビジネスプロデューサーと呼んでいます。
このポジションへ応募いただく方には、面接の際に「そもそもビジネスプロデューサーと言う名称が適切か、どのような呼称が望ましいか」と言う観点も議論したいです。

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