火の鳥(手塚治虫):まとめ/全体のループ構造・ストーリー概要・世界観を把握しよう|(0) 序論
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- POSTED : 2014.05.17 09:43
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目次
手塚治虫の超大作
ギックスの本棚では、過去にもマンガを取り上げたことがあります。(関連記事:ギックスの本棚/スラムダンク 豊玉戦)
しかし、マンガと言えば、やはりこの名作にして超大作、手塚治虫の「火の鳥」を取り上げないわけにはいかないでしょう。
1度で語りきるのは不可能→全13回の不定期連載で熱く語ります
さて、この火の鳥ですが、なんといっても「長編」です。そして、非常にメッセージ性に富んでいます。これを1度で語りきるのは人間業では不可能だと思いますので、本日は「全体像」の話に留め、各章の内容については、個別記事で不定期連載のカタチで読み解いていきたいと思います。
メインテーマは「輪廻」
あの名作「ブッダ」にも通じるテーマですが、火の鳥のメインテーマは滅びと再生。つまり「輪廻」です。
物語の構成
火の鳥は、12の「編」に分けられます。順番に並べると、このようになります。
それぞれの「編」は時代が異なります。黎明編は、卑弥呼の時代の日本が舞台です。2つ目の未来編は、遥かなる未来 西暦3407年が舞台です。全ての「編」で、不老不死をつかさどる「火の鳥」や「永遠という概念」について語られます。そして、それぞれの世界は「同じ世界」の「違う時代」の出来事です。
時系列に並べると「交互」になっていることが分かる
その「違う時代」を並べると、面白いことが分かります。
奇数番の「編」は過去を語り、偶数番の「編」は未来の物語だという事が分かります。そして、番号が大きくなるにつれて「現在」に近づいていることが分かります。
もう少しわかりやすいように「時代設定」を追記すると、このようになります。
12番目(最後)の「編」である”太陽編”では、ひとつの物語で、過去と未来の2つの時代を行き来しています。
そして、未来と過去は繋がっている
そして、最も先の”未来”である”未来編”では、最後に驚くべき結末が待っています。なんと、”未来”のさらに遠い未来には、”過去”だったはずの最初の「編」である”黎明編”がつながっているのです。(詳しくは、”未来編”の紹介記事にて掘り下げます。)
まさに、物語そのものが「輪廻」の様相を呈してくるわけですね。
このストーリー構築は、非常に壮大であり、また、緻密に考えられた結果です。このような発想を形にすることを、コンサル界隈では「Big Picture(ビッグ・ピクチャー)を描く」と呼んだりもしますが、これだけの「Big Pictureを描く」のは並大抵のことではありません。手塚治虫の非凡さが伺えます。
本当は、第13編「現在編」が書かれるはずだった
手塚治虫は、亡くなる間際まで、漫画を描き続けていたと言われています。そして、火の鳥の最終巻である「現在の物語」を書こうとしていた、と。そして、大変残念ながらその試みは成就しなかったのですが、彼が目指していたものはなんだったのかについて、読者は想像せずにはいられません。
wikipediaからの孫引きとなりますが、引用します。
1968年の虫プロ商事から発行された火の鳥未来編の単行本のあとがきでは手塚は次のように語っている「私は、新しいこころみとして、一本の長い物語をはじめと終わりから描き始めるという冒険をしてみたかったのです。」「最後には未来と過去の結ぶ点、つまり現代を描くことで終わるのです。それが、それまでの話の結論に結びつき、それが終わると、黎明編から長い長い一貫したドラマになるわけです。したがって、そのひとつひとつの話は、てんでんばらばらでまったく関連がないように見えますが、最後にひとつにつながってみたときに、はじめてすべての話が、じつは長い物語の一部にすぎなかったということがわかるしくみになっています。」後に『ニュータイプ100%コレクション 火の鳥』(角川書店/1986年刊行)の角川春樹との対談の中で、手塚治虫自身が「現代編」の構想を明かしている。手塚は「現代」というものの解釈を「自分の体から魂が離れる時」だとしていた(それ以降の未来がなく、そこから以前は全て過去であるため)。そして、その時こそ「現代編」を描く時だと語った。それを聞いた角川は手塚に対して「死ぬ時ですからね。描けませんよ(笑)」と語り、手塚は「いや、僕は描いて見せますよ」「一コマでもいいんですよね。それが一つの話になっていればいいんですから」と死ぬ直前に一コマでも物語を描くことを約束している
wikipedia:火の鳥 より引用
ご参考:読み方バリエーション
赤い矢印に沿って読んでいくのが通常の読み方なわけですが、「輪廻」という流れを理解すれば、”時系列で読み進めていく=灰色矢印の順序で読む”こともできます。一度、お試しください。
次回以降、各「編」を読み解き、手塚治虫の描きたかった「現在」に迫ります
このように壮大なテーマを書き続けた手塚治虫の「世界観」を順次読み解いていきます。
尚、不定期連載でお届けしていきますので、更新情報は twitter:www.twitter.com/gixojp で適宜ご確認いただければと思います。
ギックスの本棚:火の鳥を読み解く 連載記事一覧
- (0)序論 =本稿
- (1)黎明編:権力者の欲望と、種としての存続
- (2)未来編:過ちを繰り返すだけの人類が進む”未来”とは?
- (3)ヤマト編:人が創る”歴史”に意味はあるのか?
- (4)宇宙編:「愛」と「業」
- (5)鳳凰編:”他人”の評価を気にして生きるべきか、”己”と向き合って生きるべきか
- (6)復活編:ヒトとして生きるとは?
- (7)羽衣編:42ページに濃縮された「火の鳥」のエッセンス
- (8)望郷編:だれかの「やりたい」が他人を振り回す
- (9)乱世編:大義に翻弄される他人の苦しさを知れ
- (10)生命編:倫理感というから分からなくなる。生命の重みと言えば良い
- (11)異形編:ループ構造の中のループ構造
- (12)太陽編:「火の鳥」世界の無限回廊から抜け出すためには
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