ギックスの本棚/日本史の謎は「地形」で解ける
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- POSTED : 2014.04.19 10:56
f t p h l
地形を見ると、歴史の定説がひっくり返る
日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫)
歴女と言う歴史好きあるいは歴史通の女性を指す造語が生まれるこのご時世、ますます歴史に興味・関心をもつ方々が増えているのではないでしょうか。歴史には定性というものがあり、多くの人は歴史の教科書に書いていることを学んで日本を歴史を知ることになります。そして、歴史の定性の多くは勝者側の理論に基づき現代に引き継がれた内容になっています。一方で、歴史には信ぴょう性が高いものから、眉唾ものまで含めて都市伝説的な諸説も存在していることも事実です。
本書が絶対的に正しいかは専門家の意見が分かれそうですが、「地形と気象のプロ」の視点から推察した説を唱えており非常に楽しむ読むことができます。
本書は18の諸説から成り立っているのですが、その中でも一番注目をあびるのが2章の織田信長に関する章でしょう。
なぜ信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしたか
歴史に疎い方々でもおそらくは知っている史実である「比叡山延暦寺の焼き討ち」。1571年のこの歴史的大事件は、起こったことは確かですが、なぜ信長は焼き討ちを命じたのかその理由は定かではありません。
今までの定説では、主に以下のような内容ではないでしょうか。
- 比叡山の僧侶たちの敵対する浅井家への加担への報復
- キリスト教の擁護
- 僧侶たちの堕落した暮らしぶりが気に食わなかった
(女人禁制の山に美女が多数存在し、肉や魚も食していたと言う記述あり) - 寺社の商業利権を得るため
(信長は経済政策にも優れた武将であり、誰よりも統治に金が必要なことを理解していたという説あり)
本書では比叡山延暦寺の焼き討ちの理由を以下のように推察しています。
比叡山は京への侵入口の逢坂を見下ろしていた。信長はその比叡山と逢坂の地形関係に耐えられなかった。
どのような強力な軍団も、緑繁る日本の山中ではその強さを発揮できない。日本の峠は越えはどこも狭い。馬1頭、せいぜい2頭が並ぶ程度の幅でしかない。このような峠越えでは軍の隊列は細長く伸びきる。大将隊を横から攻撃して前後の隊を切り離してしまえば大軍は役にたたない。
そして、その重要性を誰よりも理解していたのは信長でした。彼は12年前の桶狭間の戦いで今川義元を打ちとった際に、同様の戦略をとったのです。桶狭間の山中で今川義元の戦線が伸びきった折に、大将の今川義元を狙い撃ちしたのです。
- 戦国の世を制するためには上洛が避けられない。
- 上洛するにはこの逢坂峠を通らざるをえない。
- その逢坂峠には比叡山の僧侶たちが侵略者を手ぐすね引いて待っていた。
- よってその逢坂を守る比叡山の僧兵を壊滅させた
人文社会の観点ではなく、あくまで地形と気象からのみ推察を進める本書。仮説の拠り所を徹底してずらさず、常に地形と気象のみにその焦点をあてて歴史を紐解いていきます。章を読み進める毎にすっかりこの本の虜になっているのですが、コンサルタントの視点に立てば、事業構造やメカニズムなどを紐解く行為にも通ずるものがあり、学びの多い1冊になること間違いなし?
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