ギックスの本棚/戦略PRの本質 ~実践のための5つの視点~(井口理 著)
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- POSTED : 2014.01.12 10:42
f t p h l
PRの人だけじゃなくて、マーケの人も読むべき
「戦略PRっていうけど、本来PRって戦略的なものですよね。というわけで、ちゃんと”PR”を”戦略的に”やるためにどうしたらいいか考えましょう。」というのが本書のメイントピックです。著者が電通パブリックリレーションズ所属ということなので、正直、広告代理店さん関連の方の著書・講演にありがちな「我田引水」感はゼロではありませんが「戦略PRを実践する」という観点では非常に本質をついている記述が多く、”ためになる本”だと思います。
PRってそもそも「戦略的」でしょ?
まず、本書では「PRのあるべき立ち位置」をこう定義します。
現在の日本におけるPRのポジション:PRは狭義の意味である「パブリシティ」として捉えられており、広告の附属的なポジション
理想的なPRのポジション:PRはコーポレート・コミュニケーションの視点を吹かしながら各種コミュニケーション施策を俯瞰してメッセージング・コンセプトを設定するポジション
著者は、マーケティング・コミュニケーションと、コーポレート・コミュニケーションという二つの「コミュニケーション」は有機的に連動すべきであり、その一翼(コーポレート・コミュニケーション)を担うPRは、マーケティングと同様に「コミュニケーション戦略」に則って活動するものだ。と主張しています。
これは、非常に正しい視点だと僕も思います。マーケティングと呼ぶのか、PRと呼ぶのかはさておき、「コミュニケーション設計」は非常に重要です。また、ついつい顧客にばかり目が向きがちですが、投資家(IR)やパートナーとの関係構築(PRM)も重要な要素です。これらを「有機的に連動させる」ことをゴールとする際に、一つの有効な「手段」としてPRが存在するべきだと言えるでしょう。
この観点から、この本を手に取るべきは(PR担当者のみならず)「マーケティング担当者」だろうと僕は思います。
どういう技を繰り出すべきか
副題に「実践のための5つの視点」とある通り、本書は非常に実践的です。PR施策で狙うべき事について、数多く触れられますが、「PR IMPAKT(R)」は非常に使いやすいフレームワークだと感じます。
「自分ゴト化」へと導く戦略PRの1つのエッセンス 「PR IMPAKT(R)」
(中略)
- 「Inverse」(インバース)=逆説、対立構造
- 「Most」(モウスト)=最上級、初、独自
- 「Public」(パブリック)=社会性、地域性
- 「Actor/Actress」(アクター/アクトレス)=役者、人情
- 「Keyword」(キーワード)=キーワード、数字
- 「Trend」(トレンド)=時流、世相、季節性
これらに関する、具体例も本書では紹介されますので、詳細はご購入いただければと思いますが、「意外性と必然性のバランスが肝だ」などといった非常に実のあるコメントに溢れていて参考になります。
ネタ帳としても有効
上述のように豊富な事例によって彩られている本書ですが、事例のみならず「著者なら、例えばこう考える」という思考例(試行例)も記述されています。ですので、PRのアイデアを考えるにあたって非常に参考になると言えます。
例えば、、、
「ファミリーでなく、1人暮らしのもっと若い世代」に、この大型洗濯機を買ってもらうにはどうすればいいでしょうか?
例えば1人暮らしの働く女性がいたとします。この女性の生活環境を想像してみましょう。
ということで、ストーリー構築を行い、「1人暮らしの働く女性」が「大型洗濯機を買う必然性」を描きます。
また、あるいは、
ここで事例をご紹介しましょう。(中略)新千歳空港のリニューアルオープンをお手伝いした時の情報発信についてです。(中略)
もしこの空港のリニューアルをニュースとして取り上げてもらうなら、どのような切り口があるのか。そこで浮かび上がったのが、次の3つでした。
- 空港リニューアルが北海道にもたらす経済効果
- 人気の北海道スイーツに、さらなる新商品登場
- 最新空港を起点とした北海道丸ごと満喫プラン
実はこの3つは、「経済ニュース」「朝や昼の情報番組」「週末の旅関連番組」といった、テレビで取り上げてもらうために設定した切り口です。
というように、具体的な「思考プロセス」が見える形で紹介されます。
最終章では、これらの話を統合した(副題にある)実践のための5つの視点が紹介されます。(その5つ目が「中長期的パートナーシップ」となるところに、ややポジショニングトークな雰囲気も感じてしまいますが、実際に、中長期のパートナーシップが重要なのも理解できます)
明日から使える「戦略PR」の”アンチョコ”として活用できる事請け合いです。
f t p h l