MarkeZine Day 2014 東京(A-5:ドーモ株式会社)パネルディスカッション発言録<速報版>
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本日、ギックス代表取締役CEO 網野知博が【MakeZine Day 2014 Spring】に登壇しました
ドーモ株式会社 水嶋ディノ社長がモデレーターを務めるパネルディスカッションに、KAIZEN Platform Inc. の須藤憲司CEOと共にパネリストとして、弊社網野が登壇致しました。
開催日時:2014年3月6日(木)15:15~16:05 (A会場)
A-5 中途半端にしかできていないデータ活用型マーケティング
~調査結果で実態を検証、パネルディスカッションで突破口を見出す!~
http://event.shoeisha.jp/mzday/20140306/session/445/
発言録<速報版>
水嶋氏:
本日はドーモ株式会社のUS本社が昨年アメリカで実施したデータ活用型マーケティング調査の調査結果をもとにパネルディスカッションを進めさせて頂きます。※調査概要はこちら
この調査は、3つのテーマをもとに構成されています。
1. データの取り扱い方ついて:
「日常業務でデータはどのように使われているか?」
2. データへのアクセスについて:
「マーケターはどれだけ簡単に業務判断に必要なマーケティングデータにアクセスできているか?」
3. ROIについて:
「マーケターはどのようにしてマーケティング活動の効果を測定しているか?マーケターが求める効果測定方法とは?」
では最初に「データの取り扱い方」についてお伺いします。
「分析のために利用可能なマーケティングデータ量は問題なく処理できるか?」という問いに対して、34%が「そう思う」と回答しています。一方でマーケターのほぼ3分の2が、 分析対象となるデータの”量”に圧倒されているという結果が出ています。
アメリカでの調査ではありますが、日本でも「データの量に圧倒されている」という企業は多いのではないかと思います。
では、お二人にお伺いします。
「ビッグデータを取り巻くテクノロジーは進化しているのに、なぜデータ量に圧倒されているのでしょうか?」
「データ量が増え続けている状況下において、本当に全データを対象に分析を行う必要があるのか」
「どのようにマインドやプロセスと変えれば、データ量に圧倒されずに済むのか?」
という点についてどのようにお考えですか?
須藤氏:
マーケティングのパフォーマンスを見る時にはROIの観点からコストに関するデータを参照する機会が多かったのですが、細かく分解してコストを管理していないので、「どのキャンペーンにいくら使ったんだっけ?」という情報を探すのがすごい大変だったんです。xx社にいくら支払っているということはすぐにわかるんですけどね。
データを扱う以前に探す、収集するという作業で疲れてしまうんです。
水嶋氏:
データを取り扱う以前に全体を整理するだけでも大変ということですね。
須藤氏:
そうですね、データの所在がわからないということもよくありました。データ量に関する問題もそれに付随して発生していましたね。様々なデータが取得可能になったために、データは豊富にあっても、”あるだけ”で終わってしまうんです。データが取れているのはわかっていても、”どこにあって、どうやって見るんだっけ?”となってしまう。データが分散していて、探せないという状況に陥るわけです。
水嶋氏:
”データ量”以前にデータを見つけられないということですね。網野さんはどうお考えですか?
網野:
データ量に圧倒されているという方は多いと思います。その理由は2つあると感じています。
ひとつは、使う側がテクノロジーの進歩を享受していないということです。
ビッグデータと世間で言われるようになってからテクノロジーは急激に進歩しています。我々も使っていますが、Excelライクに簡単に大量のデータを扱えるツールが100万円程で出てきています。そういった新しいテクノロジーに追い付いていないのかなと。
20年前にエクセルを使うプランナーの方はそこまで多くなかったと思いますが、今は皆さん活用されていますよね。それと同じことが起こっていて、テクノロジーの進歩に使う側が追い付いていない。そのために本来難なく取り扱えるはずのデータ量に圧倒されてしまっているのではないかと思います。
テクノロジーの進歩を享受できれば、データ量に圧倒されることもなくなると思います。
もうひとつは”スキルとセンス”だと思います。分析は”スキル”ですよね。”スキル”は後天的なものなのでトレーニングで改善できます。しかし、”センス”はそうではない。”スキル”より先天的なものの影響が大きいので養うことは難しく、”センスとスキル”を兼ね備えた人はあまりいない。
データサイエンスブームが起こっていますが、データサイエンスの理想像に完璧にマッチする人って日本では10人もいないと思うんですよね(笑)
ギックスもひとりではデータ分析はできないので、チームを組んでいます。我々は分析を担当するサイエンティスト、仮説構築と仮説の検証結果を解釈するデータアーティスト、分析基盤を作るテクノロジスト、分析結果から戦略を立てるストラテジストという4つのロールがあってこそ、データ活用が実現できると思っています。4つのロールをひとりでこなせるスーパーマンはいないので、我々はそれぞれのロールを担うメンバー集めて、4人のチームでデータ活用に取り組んでいます。
水嶋氏:
そういう意味では、データサイエンスの分野が成熟していくと、将来的に全てをこなせるデータサイエンティストが出てくるかもしれませんが、それまではロール毎に人を集めて取り組んでいくということですね。
”データを集めるのが大変”という点と”データを活用するためにはスキルが分散している”という2つの問題があって、どちらも解決できる企業はそこまで多くないですよね。
須藤氏:
私自身データを見ることが好きなので、ずっと見てられるのですが、データをたくさん見ることで何かが変わったかと言われると、会社のパフォーマンスを挙げられる程の何かを提供できているわけではないと思うんですよね。では何を求められているかと考えた時に、”見なくていいデータは見ない”という判断も必要だと思うんですよね。先ほど網野さんが仰った”センス”は”見なくていいデータ”を見分けることにもつながると思います。目的に合わせて、必要なデータを見極め、収集し、分析することが必要だと思っています。
水嶋氏:
データ量が増えているからこそ、「全て使える」ではなく、「必要なデータを選べるだけの選択肢がある」ということの方が重要ですよね。
網野:
「選択肢がある」ということは重要ですよね。一方で全データを処理できるだけのテクノロジーはあるので、それを使わない手はないなとも思います。
”本当にビッグデータって全データが必要なの?”と問われると、必要なケースと必要でないケースがありますよね。例えば、社名を公表する許可を得ているので、お話できるのですが株式会社ビューカード(以下ビューカード)では、450万人の顧客がいるのですが、データをもとに全体の傾向を見ることは可能です。
しかし、ルミネカードやビックカメラSuicaカードといった様々な種類のカードを発行しているビューカードでは、カード毎に特色があり、それぞれのカードで、性・年代、郵送、店頭、Webといった入会チャネル、利用先などで細かく傾向を見たくなります。それらに対して細かくセグメントを切って、統計的に歪まないように計算して、サンプルデータを抽出し、サンプルデータを分析するくらいなら、4.5万人でも、450万人でも分析にかかる時間は変わらないので、全件処理して、好きなメッシュで切れるようにしちゃおうよ、というやり方もありだと思うんですよね。逆に須藤さんが仰るように、データが多すぎて、対応しきれないということもあるので、必要に応じて使い分けるということが重要になるのかなと。
水嶋氏:
目的に即した分析方法を見分けるにも”センス”が重要になりますよね。これは各企業が実際に取り組んでいく中でノウハウとして培っていくしかないですよね。
では、次のトピックにうつります。
データへのアクセスについて:
マーケターがどれだけ簡単に業務判断に必要なアクセスできているか?
調査ではリアルタイムであることの重要性について聞いてみました。
8割以上の方はリアルタイムでデータを見られることは重要だと答えていますが、一方でその中で実際に必要なマーケティングデータにリアルタイムでアクセスできている人は3分の1しかいない、という結果が出ています。
そもそもリアルタイムデータであることは本当に重要なんでしょうか?
又、リアルタイムである必要がない場合にはデータの生成頻度や更新頻度はどのように考えていけばいいのでしょうか?
須藤氏:
リアルタイムで見るべきか否かは業種にもよりますよね。例えばトレンドの変化が激しい、ショートタームでのキャンペーンを実施するといった業種・業態であれば、重要だと思います。要は自分達が振り返りを行うサイクルによると思うんです。データを見て、その後のアクションを変えるにはどれ位時間がかかるということです。データの活用方法に近いですが、リアルタイムで情報を見られたとしても、次のアクションを取れるのが3カ月後だとしたら、リアルタイムである必要ってないですよね。
水嶋氏:
リアルタイムの重要性はデータの生成頻度ではなく、アクションを実施する頻度によるということですね。
網野:
その通りだと思います。先ほど、須藤さんにDOMOのツールでリアルタイムの経営状況を見せて頂いたのですが、須藤さんのようにリアルタイムで経営判断をできる方であればリアルタイムで見るべきだと思います。
マーケティングデータについては、リアルタイムとタイムリーとの違いを認識すべきだと思います。マーケティングで活用する上で、タイムリーさは絶対条件だが、そのための分析でリアルタイム性が必要なものはあまりないかと。
タイムリーにも3つのパターンがありますよね。
・バッチ処理で分析し、こちらが思うタイミングであてる
・バッチで分析して、あるトリガー(xxでyyな行動をした人)でリアルタイムにあてる
・リアルタイムに分析して、リアルタイムであてる
リアルタイムで分析し、リアルタイムで何かをあてる技術がどの程度あるのか把握していませんが、そういった技術があるとしてまだ投資対効果が合わないのではないかなとも感じています。
須藤氏:
タイミングは重要ですよね。
私は別の観点でも考えていました。上司にレポートする手間と時間です。弊社ではDOMOを利用しているのですが、その理由のひとつは社員のレポーティングに関わる手間と時間を極力省けることなんです。その時に欲しいデータは自分で取りにいく、社内のリソースは外に向けたいと考えています。社内のレポーティングにかかる時間すなわちコストを減らせるという点ではリアルタイムであることは重要だと思いますね。
水嶋氏:
そこにはデータ処理が自動化されていることも必要ですよね。データがリアルタイムで更新されるから、リアルタイムで見ることができる。たまにしか更新しないのであれば、リアルタイムである必要はないですからね。
リアルタイム性はデータの性質ではなく、活用する側がリアルタイムでデータを見て、アクションをすぐに取れるかどうかという点で必要性を判断すべきですよね。
網野:
そうですね、リアルタイム性を活かせるかどうかによりますね。
インドの携帯会社の事例なんですが、インドではSIMフリーの携帯電話が多く使われていて、数カ月単位のSIMが切れるタイミングで一番安いSIMを出している携帯会社に乗り換えるということが起こっています。ですので、SIMが切れるタイミングでオファーを出す必要があり、リアルタイム性が重要になってくる。しかし、日本でその活用事例は使えないですよね。そもそもSIMフリーではないですし、契約も2年単位が多い。そうなると定期的に訪れる更新時期に効果的な施策をあてることの方が重要であり、毎日分析を回してリアルタイム性を追求する必要性はなくなるわけです。
取りたいアクションに応じて、どこまでリアルタイム性が必要とされるのかを考えるべきですよね。
水嶋氏:
それでは次の設問です。
3. ROIについて:
マーケターがどのようにしてマーケティング活動の効果を測定しているか?マーケターが求める効果測定方法とは?
調査結果で3つのことがわかりました。
・マーケターはマーケティング活動を 数字で報告する必要に迫られている
・多くのマーケターがEメールマーケティングを除いた、バナー広告等の一般的なマーケティング施策のROI算出は困難だと感じてる
・多くのマーケターが ROIの向上に対して責任を担っているが、 半数近くのマーケターがROIを測定できていない
マーケティングは投資なので、効果を数字で示すことは当然重要ですが、売上に直接貢献しない施策ばかりではないのも事実ですよね。売上貢献を示せない施策はどのように効果を説明すべきだと思いますか?
須藤氏:
予算を行使するので、説明責任は伴います。しかし、ROIを算出するためにもコストってかかりますよね。説明責任を果たすためにお金がかかるわけです。そのコストを抑えるために、最初の「決め」が重要だと思います。「xxとxxを効果としてみましょうね」という約束みたいなものです。
そして、ROIを把握していないのではなく、”把握できない”ということもあると思います。であれば、最初に「何をもって効果とするか」という「決め」がこのROI問題を解決するひとつの方法だと思います。
水嶋氏:
指標だけを決めるのではなく、予算を出す側と使う側の期待値をすり合わせておくことが重要ですよね。
須藤氏:
そうですね、最初に「決め」さえできていれば、決められた効果を日々追う事は難しくないと思います。
網野:
マーケティングROIを算出するのはすごく難しくて、お金と時間がかかる。本気でマーケティングROIを出そうと思えば、モデルを作って算出することは可能だが、2年はかかる。それだけの時間とお金をかけてマーケティングROIを算出する基盤を作ったとして、投資対効果が合う企業はそんなに多くないはずですよね。
「決め」も重要ですし、中間KPIやマイクロコンバージョンといった、「何を獲得したら成功なのか」も必要です。ROIの”R”が売上や客数だけでないこともあるはずですよね。Returnの定義を固めて、例えば「認知獲得のための施策なので、こういったスコアが獲得できれば目標達成です!」と最初に言い切った方が効率が良い。
須藤氏:
そうなんです、以前アトリビューションを分析しようとして私も大変苦労しました。
それに加えて正しいかどうかは次のアクションに貢献しないことがいっぱいあったんですよね。要は感覚と正確なデータの結果が一緒だったということがわかってもアクションにつながらない。
ROIを考える時に、マーケターの時間を何に振るのかが重要だと感じています。分析して何か理解することに時間をかけるのか、それとも次のアクションを起こすことに時間をかけるのかを判断すること。実は後者の重要で、仮説の再構築やディスカッションに時間をかける方が意味がありますよね。
水嶋氏:
どれだけ詳細な分析結果を出すかより、事業に影響を与えるようなアクションが起せるかどうかですよね。
須藤氏:
そうですよね、感覚と分析結果が一致した時には達成感と共に少し残念な気持ちが残ってしまうんです。”この一カ月何してたんだろう”と。
水嶋氏:
ROIの説明責任を求められると、知らず知らずの内にROIが算出しやすい施策に偏ってしまうこともありますよね。
須藤氏:
経営者の視点では、ROIはもちろん重要ですが、従業員が何に時間を割いているかが気になります。ROIの算出はラフでもいいから、次のアクションに時間を割いてほしい。
網野:
そうですよね。次の改善につなげることが重要で、改善に使えないのであれば分析をする必要があるのかを検証すべきですよね。
水嶋氏:
時間も迫ってきたので、DOMOのユーザーとして、「DOMOってDOYO?」
やはり笑いは起きないですね。。。。
網野:
ここで笑いが起きる予定だったんですけどね(笑)
水嶋氏:
では、真面目に聞きます。DOMOの魅力を一言で表すならどんなところでしょうか?
須藤氏:
我々は管理会計からフロントの営業管理まで見える化しています。
DOMOのいいところはデータをビジュアライズできること。
これによって何が起きるかというと、「やる気が出る」のです。
苦笑が起きましたが、ほんとに重要だと思うんです。売上が伸びている、レスポンスが上がってきた、といった自分たちの頑張りが可視化されることでやる気が出ると感じています。
水嶋氏:
ありがとうございます。そうですよね、先ほどから話に上がっているアクションを起こすにしてもモチベーションは重要ですし、アクションを取るまでの時間短縮にもなりますよね。
網野さんはいかがですか?
網野:
データアーティスト、ストラテジストにとって最高のおもちゃだと思っています。
サイエンティストは自分でデータを生成したり、好きな切り口でデータを見ることができるんですが、私のようにデータアーティストやストラテジストにはそれってなかなかハードルが高いんです。
仮説が浮かんでも、それを依頼して分析してもらうのが心苦しくなってくるんですよね(笑)
DOMOがあれば、手元でデータをいじって自分の仮説が正しいのか、どんな戦略を立てられるのかということを試行錯誤することができる。それがDOMOの良さだと思っています。
水嶋氏:
ありがとうございます。ツールやアプリケーションと言われるより、おもちゃって言って頂けると嬉しいです。ツールってもらってもあまり嬉しくないですが、おもちゃはもらって喜ぶじゃないですか(笑)
ユーザーの方に喜んでもらうことが我々にとっては何より嬉しいです。
今日はお忙しい中、ありがとうございました。
(以上)
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