「フルマネージド」クラウドサービス~第二回・贅沢な問題が生まれる~

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世の中が便利になると次の問題が生まれる

本連載は全五回で「フルマネージド(Fully Managed)のクラウドサービス」について書かせていただいています。今回はその二回目です。前回はフルマネージドのサービスとは何か?について説明しました。またフルマネージドサービスの登場によってサービスを提供するプレイヤーの運用作業が大きく軽減されている事にもふれました。今回はそれによってクラウド利用者に生まれた「贅沢ともいえる問題」について綴っていきと思います。

ポイント:業務アプリケーションはどこに置く?

前回、クラウドをとりまくプレイヤーとして、以下a,b,cを挙げました。

  1. クラウドサービス提供者(クラウド業者)
  2. 業務サービス提供者
  3. 業務サービス利用者(お客様)

ここで上記bの「業務サービス提供者」がお客様に対してサービスを提供するために必要な要素は何でしょうか?大きく分けて二つの要素であると考えています。一つ目の要素は「データ」です。例えばgoogleの検索サービスにお客様が求めるものは検索結果の「データ」です。二つ目の要素は「アプリケーション」です。例えばホテルの予約サイトでお客様が求めるものは「ホテルを予約する」という「手続き」です。「アプリケーションはこの”手続き”をお客様になりかわって行うものであると考えることができます。

この「アプリケーション」という要素ですが、現在多くの業務サービス提供者は、自分のアプリケーションが稼動する環境(=サーバ)を自分自身で構築して→そこに自分のアプリケーションを搭載して→自分のアプリケーションを稼動して→ようやくお客様にサービスを提供しています。またバックアップや障害時の復旧作業といった「運用作業」に関しても、自分自身で構築した環境であるがゆえに作業は自分自身で行わなければならないことになります。この状態はしばしは、

「アプリケーションと稼働環境が密に結合している」

と表現されることがあります。この「密に結合している」という状態は「すべての制御を自分の好きなように行える」という利点もあるのですが、同時に「煩雑な作業(ここでは運用作業)も自分自身で行わなければならない」という「わずらわしい欠点」も持ち合わせているのです。この欠点が以下に述べる「新しい問題」としてクローズアップされてきます。

ここに「新しい問題」が登場

従来のクラウドサービスもこの例に漏れていません。今も多くのクラウド利用者がこのようなシーンにおいて、自分のアプリケーションを稼動させるために「仮想コンピュータ」のクラウドサービスを利用しています。前回説明したとおり大部分の「仮想コンピュータ」サービスは仮想コンピュータそのものの運用作業は自分自身で行う必要があります。「フルマネージドのクラウドサービスではない」ということです。ちなみに上記一つ目の要素である「データ」に関しては、これを「フルマネージドのクラウドデータベース」に格納することによりこのわずらわしさを解消することが一般的です。

ここに最近のクラウド利用者は新しい問題を持ち始めました。すなわち「業務サービス提供者は、業務サービスのことだけを考えたい。コンピュータ障害のことなど考えたくない。でも自分のアプリケーションが稼動するサーバだけは自分で面倒を見なければならない。これすらもわずらわしい。」と思い始めたのです。具体的には「クラウドデータベースを使えばデータベースのバックアップや障害時の自動復旧をしてくれるのに、アプリケーションが稼動するサーバに関しては、これを自分たちで行わなければいけない。せっかくここまで便利になったのだから、これもやりたくない。」と思い始めたのです。

次回・次々回はこれらの解決策「フルマネージドのアプリケーションサービス」を紹介

上記の問題はクラウドの普及に伴う「贅沢な問題」といえるでしょう。フルマネージドのサービス(今回紹介したクラウドデータベースなど)が登場する前はサービスを構成する全てのサーバに関して煩雑な運用作業が発生していたのですから。でも急速に進化するクラウドはこの贅沢な問題にすら解決策を提供してきます。おそるべしクラウド!!というわけで次回次々回はクラウドの提案する「フルマネージドのアプリケーションサービス」を例に挙げながらクラウドのこれからを考えていきたいと思います。

本連載について

 

 

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