ビジネス・インテリジェンス 未来を予想するシナリオ分析の技法(北岡元|東洋経済新報社)/graffeの本棚

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本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

”考え方”に沿って”考える”ことがインテリジェンスの本質


本日は、2009年に発売された「ビジネス・インテリジェンス 未来を予測するシナリオ分析の技法」をご紹介します。

ビジネス・インテリジェンスとは何か

ビジネス・インテリジェンス、いわゆる「BI(ビーアイ)」とは何なのでしょうか。本書では、まず「インテリジェンス」の定義が語られます。

インテリジェンスとは何だろう?
我が国で、「インテリジェンス」というと、真っ先に思い浮かぶのは「知能」という意味であろう。「あの人はインテリジェンスが高い」というように使われるが、それはここでテーマにするインテリジェンスではない。
次に思い浮かぶのは、スパイや盗聴といったイメージではないだろうか。それも、ここで扱うインテリジェンスではない。
ここで扱うのは「知識」としてのインテリジェンスである(実際は「インテリジェンス」というと、「知識」としてのインテリジェンスを生産するためのインフォメーション収集・分析のような「活動」を指すこともあるし、インテリジェンス関連の「組織」を指すこともある(中略))
それは移り変わる現実をメモや録画、録音と言った形で切り取った情報、つまり「インフォメーション」を収集し、それを分析して生産されるもので、我々が判断・行動するために必要な知識なのだ。

そして、ビジネス・インテリジェンスの同義語として「CI(コンペティティブ・インテリジェンス=競争に勝つためのインテリジェンス)」を持ち出し、このように解説します。

CIとは「そうだったのか!」とか「なるほど」という形で、マネジメントの判断・行動につながるものでなければならないのだ。

つまり、BI(≒CI)とは、「意思決定・判断・行動につながる”情報・知識”」ということになります。

BIとは”考え方”

本書の中で、「シナリオ思考」というものが紹介されます。そして、その具体的な活用法として「競合仮説分析(Analysis of Competing Hypotheses)」が取り上げられます。
競合仮説分析の8つのステップの要点をまとめます。

  1. 分析初期段階で仮説を出し切ることで、ヒューリスティックバイアスのリスクを減らす
  2. マトリックス(表)をつくる。仮説を横に並べて、縦に「収集する予定の情報」を書く欄を設けておく
  3. マトリックスの縦を埋めていく。どういう情報を集めたいか、を考えるが、その時に「仮説の反証となる情報」を意図的に加えておく
  4. 集めた情報と、仮説を見比べて、「整合する(consistent=C)」、「整合しない(inconsistent=I)」、「どちらともいえない(?)」の3つに色分けする
  5. マトリックスを見直す。新たに気付いた仮説を追加し、すべてに「整合する=C」インフォメーションを消す(残す意味がないので)
  6. 仮説を絞り込む。まずは、「整合しない=I」が多い仮説を排除する。
  7. 残った仮説は、Iの数が近いわけなので、中身に踏み込んでいく。つまり、サイエンスからアートの世界に踏み込む
  8. 「サイエンスとアートの融合」。一連のプロセスを経て得られた結論に「直感的に納得できるか」「心地よいか(コンフォタブルか)」を判断する

このステップは、非常にわかりやすく、実践的です。これが、即ち「ビジネス・インテリジェンスの根幹となる」と言ってよいでしょう。

”自分の頭で考える”をゴールに据えよう

詳しくは別稿で述べますが、世の中のBIツールは「考えるサポート」をしてくれるものに過ぎません。BIとは「自分の頭で考える」ことです。これを忘れると、BIは決して実現されません。

ビジネスインテリジェンスを、実際に、自社に根付かせたい・活用していきたい、と思うのならば、「BIとは、考えることである」と認識することから始めるべきです。

忙しい人は、章ごとの「まとめ」を読もう

本書は、古いながらも、「BI」の本質を端的に表現してくれています。
忙しい人は、本書に書かれている「章」ごとのまとめを流し読みするだけでも得るものがあるハズです。ちなみに、まとめは、第1章が4ページ、第2章が2ページ、第3章が2ページ、第4章が3ページと、たった11ページです。
とりあえず、これだけ眺めてみて、興味のある章を少し深く読んでみるだけでも、全体感がつかめると思います。

ビジネス・インテリジェンス―未来を予想するシナリオ分析の技法

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